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2025/08/10

口外禁止条項を破ったら?

こんにちは、弁護士の尾形です。今回は口外禁止条項について解説したいと思います。

1 口外禁止の具体例
口外禁止条項とは、和解合意書に設けられることがある、事件の内容や事件の解決結果を第三者に話すことを禁止する旨の条項です。

 口外禁止条項の具体例としては、
「甲及び乙は、本合意の内容及び成立の経緯に関して、正当な理由なく第三者に口外、開示又は漏洩してはならない。」
「甲は、本合意書の内容について、正当な理由がある場合を除き、第三者に開示・漏洩しないことを相互に確認する。」
といった条項が考えられます。

2 口外禁止条項が設けられる理由
口外禁止条項が設けられるのは、和解の内容を当事者の一方が明らかにしたくない場合です。たとえば、
①当事者の一方が、社会的に影響力がある人物であり、事実が明らかになると注目の的になってしまう場合
②当事者の一方が不貞行為など社会的評価が下がる行為をした事件である場合
③会社が未払残業代を請求されていて、会社が解決金を支払ったことが明らかになると、他の従業員からも未払残業代を請求されることが見込まれる等後々影響がある場合
などが考えられます。

3 口外禁止条項が破られるとどうなるか
では、口外禁止条項が破られた場合、どうなるでしょうか。

大きく分けて2パターン考えられます。口外禁止条項に違約金の定めがある場合とない場合です。

 口外禁止条項に違約金の定めがある場合はどうなるでしょうか。

たとえば、
「甲が前項(口外禁止条項)の定めに違反した場合、甲は、乙に●万円を支払うものとする。」
「甲が前項(口外禁止条項)の定めに違反した場合、甲は、乙に、●で定めた解決金を返還するものとする。」
といった条項が考えられます。

この場合、法的には、その当事者による口外禁止違反が明らかである場合、その金額が余りに高額であるといった特別な事情がないときには、その金額を支払う義務が発生します。

 ただ、実際には、当事者による口外禁止違反を立証するのは簡単ではありません。当事者本人がSNSなどで口外禁止違反の投稿をしている場合は比較的立証がしやすいと思いますが、第三者が、口外禁止違反にあたる内容を口外している場合には、当事者本人が当該第三者に口外したかは明らかとはいえません。相手方当事者が口外した可能性もあるからです。

 一方、口外禁止条項に違約金の定めがない場合はどうでしょうか。一見すると、口外した当事者に賠償させることはできないように思えますし、実際にも難しいところではあります。

 ただ、口外した内容が、社会的評価を下げるもので、名誉棄損にあたる場合や平穏な生活を営むことを害するもので、プライバシー侵害にあたる場合などには、賠償させることもできるでしょう。

 今回の解説は以上です。お読みいただき、ありがとうございました。

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