Q 私は、社員50人ほどの電機メーカーの人事課長です。業績悪化のため、会社の命令で従業員に退職勧奨をすることになりました。何に注意したらよいですか
A 退職勧奨とは、会社が従業員に退職を促すものです。会社が一方的に行う「解雇」とは異なり、従業員が退職に同意しなくてはなりません。会社が退職を促すこと自体は基本的に自由ですが、退職の強要にならないよう注意する必要があります。
強要にあたると、退職が無効となったり、会社や退職勧奨の担当者らが損害賠償責任を負ったりする可能性があります。
具体的には、裁判において、(1)同意しないと明言している従業員に執拗(しつよう)に退職を迫った(2)暴力や無意味な仕事による嫌がらせをした(3)「自分で行き先を探してこい」「管理者としても不適格である」などの侮辱的な言葉を使った-などの事案で、従業員からの損害賠償請求が認められています。このような退職勧奨は絶対にしないでください。
なお、従業員から退職を拒絶されても、強要にならない範囲で退職勧奨を継続することは可能です。その際には、従業員の言い分をしっかり聞くとともに、退職金や解決金などの支給があることや、会社都合退職となることなどのメリットを従業員に示すと効果的でしょう。
退職勧奨は、従業員にとっては人生の一大事です。泣き出す人や怒り出す人もいます。その場合には、無理に続行せず、日を改めて面談を行うなど、十分な配慮をしてください。
(こちらの記事は、2023年3月22日に西日本新聞の『「ほう!」な話』というコラムに寄稿したものとほぼ同内容です。 https://www.fben.jp/hou/20230322.html)