皆さんこんにちは、弁護士の尾形です。
今回は、中小企業向けに無料掲載をうたう求人広告の営業を受けた場合の注意点と、契約してしまった場合の対処法についてお話しします。
1 無料求人広告の問題点
2018年末頃から、中小企業をターゲットに、無料をうたって求人広告を掲載させ、一定期間経過後に高額な請求をしてくるという悪質な手口を用いる会社が増えました。具体的な手口は、とにかく無料であることを強調して契約に持ち込んできますが、契約書や利用規約をよく読んでみると、小さな文字で一定期間経過後は高額な広告掲載料が発生すると書いてあるというものです。
この手口の悪質なところは、被害者となるのが個人ではなく企業であるため、消費者保護のために様々な契約解除の事由が定められている消費者契約法やクーリングオフの適用がないということです。
2 無料求人広告の営業を受けた場合の注意点
まず、無料求人広告の営業を受けた場合の注意点についてお話します。
無料の求人広告をうたう企業から営業があった場合には、基本的には疑ってかかってください。また、契約を結ぶことを決めた場合でも、かならず、契約書や利用規約を細部まで良く読んでください。無料期間が終わると有料になる定めがないかよく確認してください。さらに、契約解除の方法を確認してください。たとえば、書面による契約解除のみを認めており、口頭で契約解除を伝えても有効にならないとしている場合があります。
3 無料求人広告を契約してしまった場合の対処法
次に、契約してしまった場合の対処法についてお話します。
無料の求人広告をうたう企業と契約を結んでしまった場合には、一定期間経過後に有料とならないか、契約書や利用規約を見返して確認してください。予期せず有料となる旨を見つけた場合には、すぐに契約を解除するようにしてください。契約の解除の方法が契約書にある可能性が高いので、それにしたがって契約を解除するようにしてください。ただし、その中でも、形の残る形式で解除するようにしてださい。たとえば、メールや内容証明郵便(郵便局が書面の送付を証明してくれるもの)が考えられます。
既に有料期間に入ってしまっている場合や、その場合に相手方から請求が来ているときには、早急に弁護士に相談してください。
相手方の主張を拒む根拠としては、詐欺や勘違いで契約してしまったという場合に使える錯誤というものがあります。具体的には、ずっと無料ですという話をされたにもかかわらず契約後に広告掲載料を請求されたという場合に、詐欺や錯誤を主張できる可能性があります。しかし、メールや録音などの証拠資料がなければ、その事実を立証することが難しいです。また、何が証拠資料となるかは、判断が難しい面があります。そのため、詐欺や錯誤等の法律上の主張を、的確に行うためには、弁護士のサポートが必要といえます。
また、相手方から郵送などで請求が来始めると、電話がかかってきて、督促してくる場合がありますが、これらの対応も、弁護士に相談して依頼すれば、弁護士に一任することができます。督促への対応による従業員等への精神的負荷は予想以上のものです。請求にこたえて支払ってしまう前に、是非、弁護士に相談してください。
4 まとめ
最後に、今回のお話のまとめです。
まず、契約を結ぶ前の注意点です。
- 無料の求人広告をうたう企業から営業があった場合には、基本的には疑ってかかってください。
- 契約を結ぶことを決めた場合でも、かならず、契約書や利用規約を細部まで良く読んでください。無料期間が終わると有料になる定めがないかよく確認してください。
次に、契約を結んでしまった場合の対応方法です。
- 契約を見返して、必要に応じて、契約書や利用規約に書かれている方法かつ形に残る形式で契約を解除してください。
- 請求が来ている場合には、直ちに弁護士に相談してください。
今回のお話は、以上です。ご覧いただき、ありがとうございました。